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<栄枯盛衰>プロダクトライフサイクルとは

プロダクトライフサイクル

ここでは、プロダクトライフサイクルについてお話をしたいと思います。あなたは、事業を進めていく中で、自社のブランドが成長曲線を描けていないとか、商品の販売が踊り場に来ているなどの課題を感じているかもしれません。ブランディングとマーケティングにおいては、そのような状況は必ず現れてきます。そして、その状況をどのようにすれば向上させることができるか色々と模索することになります。ファイブフォース分析でもご紹介したように、市場には力関係が存在し、力学が働いています。そして、状況が変化することで、その力学においてもさまざまな展開を迎えます。

プロダクトライフサイクルとは、事業推進において様々な状況において最適解を導くためのフレームワークです。それらの状況における力関係を客観的に理解することができれば、ブランディングやマーケティングにおいて理想の施策が実践できます。プロダクトライフサイクルとは、時間軸において早い段階で変化を予測することができますし、事前に先手で対策が可能です。この項では、あなたがプロダクトライフサイクルを正しく理解し、事業に生かしていただくことを目指しています。

プロダクトライフサイクルを俯瞰的に理解する

プロダクトライフサイクルは、1950年にジョエル・ディーンが提唱した理論です。製品が市場に投入されてから衰退するまでの一連が体系となっています。製品の売上と利益を、導入期、成長期、成熟期、衰退期という4段階に分類し、それぞれにおいて戦略の示唆を与えてくれます。商品やサービスが市場に導入され、売り上げはじめ、成長から衰退まで、まるで生き物の一生のように例えられます。このプロダクトライフサイクル理論は英語の頭文字からPLC理論と呼ばれています。

話はずれますが、会社というものは10年のうちに97%が倒産すると言われています。どんな会社であっても衰退して亡くなってしまうというリスクが存在し、殆どの企業が生まれては消えていきます。その代表的な事例として、会社の年代別の時価評価額ランキングがあります。これを見るだけでも、企業にも栄枯盛衰があります。それは、商品・サービスのライフサイクルというものには、生物のように留まることがないということを意味します。

プロダクトライフサイクルをマネジメントする

プロダクトライフサイクルの特徴は、ある一時点を捉えるものではなく、時間軸が存在するということです。PEST分析や3C分析、ファイブフォース分析では、ある一時点を捉える分析方法であり、推移を考える際はプロダクトライフサイクルを検討します。プロダクトライフサイクルとは、あなたのブランドの成長ラインの予測を可能とし、様々な意思決定に影響を与えるものになります。プロダクトライフサイクルをマネジメントすることは、あなたの事業の成長性や投資タイミング、撤退時期などを検討させる視点となります。

ただし、殆どのブランドがあるポイントを超えることができずに市場から姿を消してしまっていることが現状です。どれだけの市場の中で、どれくらいのシェアを獲得していくかという点を検討しながら、様々な視点であなたの事業性を考えてみましょう。あなたはポケトルという商品をご存知でしょうか。この商品は、130万本の超える大ヒットとなっています。今後この商品が競合他社を迎え撃ち、どのように市場を作っていくかを観察していきたいと思います。

プロダクトライフサイクル理論を図解で解説

プロダクトライフサイクル理論では、平易な言葉でいえば、市場変化を「導入期」「成長期」「成熟期」「衰退期」という4段階で表します。そして、時系列の推移を横軸に、売上曲線や利益曲線を縦軸にします。プロダクトライフサイクルは、売上や利益が曲線をこのように描くという結果と捉えると非常にもったいない理論になるので、実際に活用することを前提にしていただきたいと思います。そのために、売上や利益に与えるインパクトは何か?市場変化に影響を与えたものは何か?などを理論的に考えてほしいと思います。

プロダクトライフサイクルの意義は、「将来への備え」と言えます。売上と利益に何がどのような影響を与えるのかを知っておくことがあなたのブランドを持続的に成長させる要因であるからです。ここからは、市場と消費者、自社ブランド、売上と利益という3つの視点を考慮していきます。

プロダクトライフサイクルを以下の3つで考えていきます。

・マーケットからの影響
・自社ブランドへの影響
・売上と利益の結果

これらの因果関係をわかりやすくしたものが以下になります。

プロダクトライフサイクル

プロダクトライフサイクル:導入期の戦略と事例

プロダクトライフサイクルの導入期

イノベーター層

プロダクトライフサイクルの導入期とは、あなたが新商品やサービスを市場に導入したタイミングを意味します。導入期では、どれだけ商品やサービスの浸透度を市場において高めることができるかが重要なポイントです。御存知の通り、このステージでほとんどの商品・サービスが消えてなくなります。会社においても同様です。10年で約95%ほどが倒産するという現状においても、「売れない」ということがどれだけ現実に起こっているかを知ることができます。残念なことに、マーケティング業界においても、多くの商品・サービスは導入期で消えていってしまうことが通説になっているようです。

プロダクトライフサイクルの導入期に商品やサービスを購入するのは、熱烈なファンである層といえます。彼らはイノベーター層と呼ばれ、スタンフォード大学のエベレット・M・ロジャーズのイノベーター理論でいえば、市場における普及率は2.5%までとされています。イノベーターは情報感度が高く、新しいものを積極的に導入する好奇心を持った層です。コストが高い製品やサービスであっても、「新しい」ということに価値を感じる層で、そのユーザーの価値観に合致したモノであれば支えてくれます。

イノベーター層とは、常にその分野における先駆者的存在でマニアとも言い表すことができます。専門的な知識や特定分野における情報を先取りして、自ら進んで行列をなすタイプです。イノベーター層は、詳しすぎるが故に、一般の顧客層とは全く違う視点や感覚を持っています。マニアとも言い表すことができるくらいであるため、その分野においては何かの生活を犠牲にしてでも多くの時間や所得を惜しげもなく消費します。そして、その分野の専門家とも自負しているため、自らの思想や判断基準に従って、良いと思うブランドに対して躊躇はしません。

企業におけるプロダクトライフサイクル導入期

企業においては、様々な状況があるため一概に言えるものではありませんが、プロダクトライフサイクルの導入期においては、ブランドを市場に投入し浸透させる産みの苦しみが待っています。それは、商品の製造・調達だけではなく、広告費なども大きな経費になるでしょう。イノベーターの市場はわずか2.5%であるため、その層が購入に至ったとしても投資対効果が高いとはいえません。特にこの時期は、収支のバランスがマイナスになってしまうことが想定され、企業は耐えるだけの体力が必要となります。

プロダクトライフサイクル導入期における戦略

プロダクトライフサイクル導入期は、市場ができていないためブランドに対する認知度は無いに等しい。ニーズの喚起もできていない状態のため、市場における浸透度を高めていく戦略が必要となります。例えばスマートフォンでは、シーズンになると新しいモデルが発表されます。前機種よりも高い機能性を紹介し、その素晴らしさというものを大きくアピールする経営者の姿が思い浮かびます。このとき、ブランディングにおけるコミュニケーション戦略は、今までにない「新しさ」というものを全面的に表現します。イノベーター層に対するプロモーションは、その「今までにない」ことを伝え開拓していくことが必要となります。

プロダクトライフサイクル導入期における留意点

あなたの戦略が予定通りに進んで、ブランドが商品カテゴリーの先駆者としてイノベーター層にインパクトを残すことができたとします。そうするとあなたのブランドは商品カテゴリーを代表するブランドと認識されるかもしれません。例えば、バンドエイドはブランドであり、商品カテゴリーを言い表すものではありません。絆創膏がその商品カテゴリーであり、バンドエイドはある企業のブランドなのです。それくらいバンドエイドは消費者の中に圧倒的な地位を誇っています。一方で、市場にインパクトを残せず、ビジネスが伸びなかった場合では、戦略に転換をすることが必要になってきます。プロダクトライフサイクル導入期には、トライアンドエラーの連続でどう成功を生み出すかが大事で、一発で大当たりというビジネスは存在しないでしょう。ただし、プロダクトライフサイクルを理解しておくことで、どのようなタイミングでどんな打ち手をするかが計画しやすくなります。

プロダクトライフサイクル:成長前期の戦略と事例

プロダクトライフサイクルの成長前期

アーリーアダプター

マーケットの成長率が高まるプロダクトライフサイクルの成長前期とは、売上が急拡大していく時期と言えます。この時期になると、市場が成長することに対する期待から、新規参入する企業が増えてきます。一時期介護施設や訪問介護サービスが急拡大したのは記憶に新しいと思います。プロダクトライフサイクル成長前期における、商品やサービスの購入者はアーリーアダプターと呼ばれています。

アーリーアダプター層は、オピニオンリーダー層とも呼ばれ、市場内での普及率は2.5%~16.0%まとなっています。アーリーアダプター層は全体の市場の13.5%となります。彼らの特徴は流行に対して敏感に反応します。導入期のイノベーター層は、情報感度が高く、新しいものを積極的に導入する好奇心を持った層であることに対して、アーリーアダプターは流行の兆しをいち早くキャッチし、コミュニティへ発信することを得意とします。iPhoneやApple Watchの新製品を手に入れ、周りにその独特の情報感度の高さを自慢する人こそアーリーアダブターだということができます。Facebookが流行りだしたときも、その使い方をレクチャーする人たちがたくさんいましたが、その方々がまさにアーリーアダブターです。アーリーアダプターは、流行に敏感な人として認識されています。

企業におけるプロダクトライフサイクル成長前期

市場全体に対する13.5%の割合を持つアーリーアダプター層に普及が進むプロダクトライフサイクルの成長前期では、販売数量や売上が拡大します。企業は、ある意味マーケティングの成功パターン上にあり、生産設備の増強やチャネル拡大のために積極的に投資を行うことになります。これらに付随して、規模の経済が働くことで仕入れ単位コストが下がり、急速に利益が増加することが見込めます。

プロダクトライフサイクル成長前期における戦略

商品やサービスが成長前期に移行すると、あなたの商品・サービスの販売数量と売上が大幅に伸びていくことになります。あなたはこの事業拡大のタイミングにどのようなマーケティングの施策を行いますか?あなたの商品が何かによって次の施策はもちろん変わってきます。ここでは、3つのチャネル施策(開放的チャネル、専属的チャネル、選択的チャネル)というものがあなたの事業の後押しになるかもしれません。

プロダクトライフサイクル成長前期の留意点

ここで大事なことは、思い通りに事業は進んでくれないということです。プロダクトライフサイクルの導入期から成長期へとステップアップする商品やサービスは、本当に少数です。マーケティングを行う担当者としての大きな問は、どのように成長期にステップアップできるかどうかです。少数の商品・サービスのみが成長前期へ歩みをすすめることができる一方、ほとんどの商品・サービスが市場から姿を消してしまいます。

さて、次の成長前期と成長後期の間に存在するキャズムというものをあなたはご存知かもしれません。商品・サービスの市場普及率が16%ほどになると普及スピードが一旦停滞するという理論があります。しかし、私個人の見解では、導入期と成長前期の間にもキャズムが存在するのではないかとの見立てをしています。その理由はイノベーター層とアーリーアダプター層の購買動機の違いからだと考えています。イノベーターは情報感度が高く新しいものに対して購買意欲がそそられることに対し、アーリーアダプターは自分自身が流行の先取りのような情報発信することに関心があり承認欲求が高い層です。この2者のニーズの違いは明らかでマーケティング担当者はそれぞれに適したコミュニケーション戦略を考えなければなりません。

プロダクトライフサイクル:成長後期の戦略と事例

企業におけるプロダクトライフサイクル成長後期

アーリーマジョリティ

プロダクトライフサイクル成長後期とは、商品・サービスが一気に普及・拡大し、成熟期に差し掛かっていくまでの時期を指します。プロダクトライフサイクルの成長後期では、市場の賑わいが明らかとなるため、様々な企業が新会社を設立したりしながら参入してきます。ハウスウエディング市場が大きくなると参入企業が増えたり、介護施設市場が活況となれば大小様々な事業主が参入してきました。プロダクトライフサイクルの成長後期は、多くの企業が参入してくることから、購買者からみると商品やサービスの差別化が分かりにくくなり、価格が下る現象も見られ競争が激化する傾向にあります。また規模の経済や経験値の高さが優位に働き、設備や販売チャネルの拡大といった投資戦略に移行する企業も現れてきます。

プロダクトライフサイクル成長後期における戦略

プロダクトライフサイクル成長前期の購買層をアーリーマジョリティ層と呼びます。アーリーマジョリティ層は、アーリーアダプター層から影響を受けて購買行動を起こします。また別の言い方をすれば、興味のある商品・サービスにおいて、アーリーアダプター層のレビューを気にすることが特徴的です。非常に実利的な購買層であり、新しいものに興味を持っているにも関わらず、しっかりと情報を集めて納得した上で購入します。アーリーマジョリティ層は、大衆層への橋渡し的な役割があることからブリッジピープルと呼ばれます。プロダクトライフサイクル成長後期では、商品・サービスは市場の34%に普及するため、企業の収益が高まる時期です。つまり、大手の参入も多くなり、市場の成熟期に向かって価格競争も激化します。マーケティングコストが大きくなり、成長局面ではあるものの成熟期への対応も求められるステージとなります。

キャズム

成長前期でも触れましたが、成長後期に差し掛かる段階にもキャズムが存在します。これは普及率16%のキャズムと呼ばれ、2つの層のニーズの違いにより発生すると考えられます。アーリーアダプター層は承認欲求が高い層であり、アーリーマジョリティ層は流行を抑えつつも、実利をきっちりと求めてきます。そのため、商品・サービスの価値を高め、ブランドの信頼性を形成しなければなりません。アーリーマジョリティ層に対しては、新しさや流行だけではなく、実利としての価値を踏まえたコミュニケーション戦略が必要になります。

プロダクトライフサイクル成長後期の留意点

プロダクトライフサイクル成長後期は、次のステージに向けての準備段階でもあります。プロダクトライフサイクル成長後期にどれだけの市場シェアを獲得できるかがとても大事であり、その結果しだいで成熟期での優劣が変わってきます。そして、このステージにおいて顧客をファンとして獲得しておくことで、長期的な収益を生み出す素地が作られます。市場が活性化していけば、プロダクトライフサイクルは成熟期がもっとも長期的になり、プロダクトライフサイクル成長後期での足場が大きく影響を及ぼします。そのために成熟期に向けてしっかりとファンを獲得し育てて、土台をどっしりとさせておき、今後の成熟期を見据えた成長後期の活動を強化しましょう。

プロダクトライフサイクル:成熟期の戦略と事例

企業におけるプロダクトライフサイクル成熟期

レイトマジョリティ

プロダクトライフサイクルの成熟期とは、市場の活況がピークであると同時に、踊り場となった時期を指します。プロダクトライフサイクルが成熟期になると、市場が同業他社で飽和状態となり、顧客も他ブランドへのスイッチが促進されることから、市場を奪い合うような構図となります。この時期に価格競争が特に激化します。プロダクトライフサイクルが成熟期では、顧客ニーズも多様化が進むと同時にニッチな戦略で市場の隙間を狙うブランドが現れます。

プロダクトライフサイクルの成熟期に初めて購入する層をレイトマジョリティ層と呼びます。レイトマジョリティ層は市場における34%の層であり、市場に商品・サービスが普及してきた頃に購入を始める特徴を持っています。あなたの周りにもきっと多数存在するはずですが、レイトマジョリティ層は流行だから購入するというよりは、たまたま購入したとか、なんとなく購入したとか、他になんでも良かったけど購入したとか、よく広告で見かけるからと、あまり積極的で能動的なタイプではないかもしれません。

ガラケーを例に取るとわかりやすいですね。ガラケーが恥ずかしくなったからスマホに変えたという層はまさにこのレイトマジョリティ層だといえるでしょう。〇〇ペイに対しても同様で、あまり関心を寄せていないけれど、なんとなく周囲に促されたというモチベーションで始める方が多いでしょう。レイトマジョリティ層に対して、プレイヤーが多い中でシェアを伸ばすのは、なかなかハードルは高いといえますが、販売実績や認知再生頻度、企業のマーケティング力やセールスが試されます。またレイトマジョリティ層は、ブランドをリピートしたり、ブランドをスイッチする層も現れます。この層は、機能的価値や情緒的価値だけではなく自己表現的価値を求めること理由で次のブランドに移行します。

プロダクトライフサイクル成熟期では、ニッチなターゲット層を求めるなどブランドが多様化することで、顧客のニーズの多様化にも沿う形になっています。あなたはビジネスを高めるため、場合によってはこのレイトマジョリティにおいて戦略の転換を必要とするかもしれません。それは、ターゲティングにも関与するこであり、自社の強みをどの市場に最適化させるかを検討する必要があるからです。

プロダクトライフサイクル成熟期における戦略

プロダクトライフサイクル成熟期では、あなたのブランドの立ち位置というものがとても影響します。それは、プロダクトライフサイクル成熟期では、企業としての選択と集中を迫られるからです。マーケティングの権威、P.コトラーが提唱している競争戦略の理論で、競争地位戦略という考え方があります。4つの地位と特徴は以下のとおりです。

プロダクトライフサイクル成熟期における戦略:リーダー

リーダーは業界シェアのNo.1の企業ブランドです。量的・質的ともに業界の他社よりもシェアを持っています。市場の隅々までカバーしている全方位戦略を展開し、業界において他社よりも収益性は高いと考えられます。2019年アメリカIDCのデータによると、スマホ出荷台数シェアは、リーダーがサムスン(21.6%)です。

プロダクトライフサイクル成熟期における戦略:チャレンジャー

チャレンジャーは業界上位のシェアを持ち、リーダーに対してトップの座を狙うブランドです。経営資源はトップに及ばず、真っ向勝負ではなくリーダーの足元を救う戦略を選択します。リーダー企業の顧客が抱えている不満に対して、商品・サービスを投入したり、細分化されたニーズを満たすための戦略を選びます。チャレンジャーは、ファーウェイ(17.6%)やApple(13.9%)です。

プロダクトライフサイクル成熟期における戦略:ニッチャー

ニッチャーは業界全体のシェアは小さいかもしれませんが、質的な経営資源の活用によって、ニッチな市場に強いプレイヤーです。シャオミ(9.2%)は中国だけではなくインドやインドネシアなどでも存在感を示しています。またOPPO(8.3%)はSIMフリーなどの特徴とアジアでの躍進が続いています。

プロダクトライフサイクル成熟期における戦略:フォロワー

フォロワーはチャレンジャーのようにトップを狙うのではなく、ニッチャーのように特定市場でも独自性を持っているわけでもありません。ただし、上位企業の模倣を行いながら、オリジナリティのある取り組みを行いながら独自の強みを強化します。プロダクトライフサイクルが成熟期になるとシェアホルダーたちの商品・サービスのスペックは大きな差を生まなくなってきます。価格も高止まりしている状態で、大衆化している印象を受けます。もし商品・サービスがリーダー企業の模倣を行いながら独自性を磨くことができるのであれば、フォロワー戦略が最適と言えます。

プロダクトライフサイクル成長後期の留意点

市場が成熟期であることの見定めが大変重要です。プロダクトライフサイクル成熟期には、顧客のニーズも多様化し、競合他社も様々なアプローチを試みるからです。プロダクトライフサイクルの成熟期は何かしらの兆しがあります。それは市場における普及率が50〜84%となるということです。イノベーター(2.5%)、アーリーアダプター(13.5%)、アーリーマジョリティ(34%)、レイトマジョリティ(34%)これらをすべて合わせると84%となり、ほぼ市場に行き渡ったという感覚になるでしょう。商品・サービスがレイトマジョリティに浸透してしまうと後の衰退期への前触れとなります。市場成熟の判断は、売上と利益の鈍化を見抜き、早い段階から次の一手を作っておかなければなりません。

プロダクトライフサイクル:衰退期の戦略と事例

企業におけるプロダクトライフサイクル衰退期

ラガード

プロダクトライフサイクルの衰退期とは、その名の通り、商品・サービスに対する市場の需要が衰退していく時期のことです。業界の再編によって既存事業が取って代わられるという状況は、もはや珍しくありません。それは、Disruptという言葉で表現されているように、テクノロジーの台頭によって既存事業が衰退してしまうことが日常的に目にするようになりました。自動車産業がまさにそうで、新規プレイヤーが参入し既存の自動車産業が再編を迎え、自動車からモビリティサービスに移り変わっています。今後、中古車販売業や自動車教習所などは利益の確保が困難になり、事業の継続がままならない会社も増えてくると予測できます。

プロダクトライフサイクルの衰退期における購入者層をラガード層と呼びます。ラガード層は、新たな物事の動向に興味を示さず、懐疑的・否定的な姿勢であり、旧来のものを使い続けようとする層のことです。例えばスマートフォンも最後まで利用しなかった層がいます。またパソコンは苦手と思い込んでいる人たちにパソコンを使わせることは非常に困難であることは容易に想像できるのではないでしょうか。このようにラガード層は、懐疑的・否定的な態度で、独自の信条によって考え方を曲げることは期待できません。企業が、このラガード層を攻略しようとするとコストが合うかどうかの判断が迫られることでしょう。そして、この衰退期では、次のトレンドとなる革新的な市場にイノベーター層を始め、アーリーアダプター層、アーリーマジョリティ層は移行を始めてしまいます。レイトマジョリティ層のリピート購入と僅かなラガード層の購買によって事業が維持できるかどうか、衰退期においては、そのような状況を理解しながら、対策を講じておかなければなりません。

プロダクトライフサイクルの衰退期の戦略

プロダクトライフサイクルの衰退期は、3種類の戦略が考えられます。それは、「撤退」「存続」「新市場開拓」です。あなたのブランドがもし市場シェアが小さいのであれば、利益の確保が難しくなり撤退をしなければならなくなるかもしれません。一方でシェアの大きなブランドは、低コストで生産する仕組みを維持することでプロダクトライフサイクルの衰退期においても利益を生みやすいとされます。撤退という選択は、企業の意思決定に差が出ます。利益を生まない被害を大きくしないためには、「逃げ足」が早いというのは、戦略的に非常に大切です。確かに従業員を始めとするステークホルダーには影響があるかもしれません。しかし会社を守るためには苦渋の選択も必要になります。

また、あなたのブランドが大きな市場シェアを持っているとしたら、存続という戦略は意味があると考えられます。シュリンクしていく市場において、競合他社が徹底する中、残存者利益が見込めるからです。競合他社が撤退を迎えるところ、耐え抜いたプレイヤーのみで利益を上げることができます。

最後に、新市場開拓とは、既存事業と既存市場の再定義(アンゾフのマトリクスを参照)を行うことで市場再活性化を目指すというものです。ネスレのネスカフェアンバサダーは、家庭からオフィスに市場を変えて成功しています。市場が飽和状態となり、流通市場において多くの競合他社とシェアを奪い合う中で、新たな市場に果敢にチャレンジした事例です。その結果、ファンを巻き込みながら独自の市場でオンリーワンの事業となりました。

日本のマーケットは人口が減少するという衰退市場だったとしても、ブランドの再定義やリブランディングを行うことで新たな市場は創造できる場合があります。企業はさらなる成長を目指したときに、イノベーションとリノベーションを繰り返していかなければなりません。変わらないのではなく、変わらないために変わり続けることが必要なのです。

プロダクトライフサイクルのまとめ

最後にプロダクトライフサイクルのまとめと活かし方を解説したいと思います。プロダクトライフサイクルは、市場の未来を予測しながら先手を打つために活用していきます。そうすることでビジネス上のにおいて、競合他社とのシェア争いや利益の獲得を優位に進めることができるのです。

プロダクトライフサイクルは、時間軸における市場状況の変化を物語るものです。そのため、現在の活動が未来にどのような影響を及ぼし、未来の状況から今どのような活動を行わなければならないか、フォアキャスティングとバックキャスティングの両方の視点を生かしてほしいと思います。そして、キャズムのお話をしました。導入期と成長前期、成長前期と成長後期には、キャズムと呼ばれる溝が存在します。そのキャズムを超えることができるかが、次の成長に大きく関与しています。キャズムを挟むそれぞれの顧客層はニーズが異なります。そのニーズの変化に合わせて商品を改善し、アップグレードし、ニーズにフィットさせることが大事です。

今、私が個人的にフォローしている業界はウォーターサーバー業界です。導入期と成長前期で利用者が増えていたのは、ボトルが自宅に届けられるサービスでした。当時は、配送業者がボトルを送って、使用後に回収するというサービスでした。そして、次の段階には、ボトルが届けられて潰したボトルをそのままゴミ箱に捨てる事ができるようになりました。現在は、成長前期と成長後期の間にあり、水道水を活用するという動きが広がっています。この流れは市場のニーズの変化によるものです。市場は各ステージにユーザーが存在し、彼らがウォーターサーバーを使用することで徐々に企業側も改善を加えていっている現状があります。今後は、消費者が比較検討しながらレビューを見たりして購入を行っていきます。そのようなときに、どう企業が手を売っていくかが見ものです。

企業が行うことは市場の変化をよく見て、正しい判断を繰り返すことで、この判断を間違えると企業は困窮することになります。大事なことは、市場の観察です。ニーズの変化が起こっているタイミングには、それはキャズムが存在しているのかもしれません。ぜひあなたも市場から目を離さず、変化を捉えていってください。