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ブランディングの事例集
こちらでは、一部当社の事例をご紹介いたします。制作事例というよりも、ブランディング目線で企業のクリエイティブを行っていますので、表面的には伝わらないことのほうが多いのですが、ブランディングのアプローチだけでも共有できればと考えています。 […]
共有するブランディング事例は、以下の5種類です。
- サービスブランディング
- 商品ブランディング
- コーポレートブランディング
- リブランディング
- BtoBブランディング
また、当社が実際に行っているブランディングの事例は、以下の記事で紹介しています。
ブランディングの事例集【当社の事例】
スターバックスのブランディング事例
まずはサービスにおけるブランディングをご紹介をしたいと思います。スターバックスは、ご存知の通り、シアトルコーヒーを提供するブランドです。
スターバックスは「人々の心を豊かで活力のあるものにするためにーひとりのお客様、1杯のコーヒー、そしてひとつのコミュニティから」というブランドアイデンティティを掲げてます。このブランドアイデンティティから読み取れることは、スターバックスの主役は人材であり、コーヒーは顧客の心を豊かにするものであるということです。
ところで、スターバックスのロゴマークは何度も変わってきました。それは、スターバックスがコーヒーショップから人を豊かにするという事業ドメインにシフトしたからです。スターバックスはブランドを体現するバリスタの育成に力を入れて成功したブランディング事例です。
スターバックスで仕事がしたいという方々がとても多いのは周知のとおりです。その中から厳選された人材のみがアルバイトとして雇用され、40~80時間ほどの教育が行われるそうです。
みなさんがサービス業であったならば、どんな教育を長い時間かけて行うでしょうか?
スターバックスの教育は、歴史や哲学から始まり、コーヒーの知識、接客など、スターバックスの考え方やブランドアイデンティティについてしっかりと落とし込まれるようです。その方向性の共有こそがブランドアイデンティティの共有であり、ブランド戦略となります。
スターバックスは、テレビなどの宣伝広告費は使わずに、PRを中心にブランディングを行ってきました。これは、従業員やアルバイト一人ひとりがスターバックスらしさを体現し、快適なサードプレイスとして他社が真似できない顧客の体験価値を仕組み化した好事例といえます。ただし、仕組みだけがそうさせたのではなく、創業からの哲学がスターバックスの深い部分に存在していることを見逃してはいけません。
ザッポスのブランディング事例
みなさんはザッポス(Zappos)という会社をご存知でしょうか。靴のネット通販会社で、顧客対応が大変素晴らしく、独自の企業文化を築いたことで名の知れた会社です。2009年11月に800億円でAmazonに買収されました。Amazonがどうしても欲しかった会社、Amazonが屈服した企業、Amazonを震撼させた企業と例えられることもしばしばあります。
顧客リピート率は驚異の75%。その理由は、以下のサービスを実施していたからです。
- 送料・返品無料。
- 返品は何度でもOK(顧客の靴の最小サイズと最大サイズを聞いて、一度に数種類を配送して試着してもうことも可能。)
- 可能な限り、翌日配送
- 24時間365日顧客対応サービス
そこまで多くのファンを作ることができたのは、CLT/カスタマーロイヤルティチームの存在がある方です。CLTが実際に行った顧客対応の事例をご紹介します。
ある女性が病床の母親に対して、靴をプレゼントしたそうです。しかし、母親はなくなってしまいます。その後ザッポスから届いた靴の具合を尋ねるメールが届きました。彼女は母親がなくなってしまったので、靴の返品を依頼しました。
本来では返却ポリシーがあり、集荷場まで靴を持ってい可なければならないのですが、その担当者の判断により、自宅に集荷の手配を取りました。葬儀後の片付けで忙しいことを察したのでしょう。
さらに、翌日にザッポスからお悔やみのメッセージとお花が届いたそうです。彼女は、感極まり涙し、心を打たれたことは言うまでもなく、ザッポスのインフルエンサーとなったそうです。
サービスを提供している企業は、どのようにお客様を感動させるかを日々考えていることと思います。しかし、その気持ちと同じくらい大切なことは、従業員が主体的に行動できる企業文化にあるのではないでしょうか。ザッポスのこのようなストーリーは枚挙にいとまがなく、ブランディングの体現者はやはり人であることを思い出させてくれます。
リッツ・カールトンのブランディング事例
1898年にパリで創業した「ホテル・リッツ」を起源とするリッツ・カールトン。現在のリッツ・カールトンとなったのは、初代社長であるホルスト・シュルツィ氏がリッツ・カールトン・ホテル・カンパニーに参画してからです。日本では、1997年に大阪、2007年に東京でオープンして、多くのファンが宿泊し、ホスピタリティの事例として注目され続けています。
リッツ・カールトンのクレドはたくさんの方々に影響を与えてきました。 「リッツ・カールトンはお客様への心のこもったおもてなしと快適さを提供することをもっとも大切な使命と心得ています。私たちは、お客様に心あたたまる、くつろいだそして洗練された雰囲気を常にお楽しみいただくために最高のパーソナル・サービスと施設を提供することをお約束します。リッツ・カールトンでお客様が経験されるもの、それは感覚を満たすここちよさ、満ち足りた幸福感そしてお客様が言葉にされない願望やニーズをも先読みしてお応えするサービスの心です。」
「クレドカード」には「目的」がきちんと書かれており、
- たたずまいから
- ふるまい
- 歩き方
- 髪型
- しぐさ
- 表情
に至るまで、毎日の仕事の中にそれを軸にした行動が生まれてきます。リッツカールトンの成り立ちそのものがブランドづくりであり、現場の従業員さんが自発的に考え行動しています。
リッツカールトンはいわゆる“ホテル”をつくっているのではありません。リッツカールトン自身がブランドでありつづけ、ここでの体験価値そのものがブランドであるためには、ターゲットを「トップ5%」の顧客に絞っています。
仮に業績が下がったからといって、トップ5%の層を20%にまで広げてしまうとリッツ・カールトンの品格やブランドが毀損してしまいます。トップ5%に絞り込むというのは、提供している価値に喜んでお金を払ってくれるコアな層が限られているからなのです。
ラグジュアリーブランドにおいて、サービスを受けることができる層というのは限られています。サービスの質を落として価格を下げたりすると、希少性という価値が失われ、世間一般のブランドに成り下がってしまい、他のホテルに埋もれてしまうのです。
レッドブルのブランディング事例
レッドブルの事例から学べることは、「ターゲティング」と「ポジショニング」です。
レッドブルが、タイの清涼飲料水を元に作られたことはよく知られています。ところがオーストリアで生まれたレッドブルブランドの方が世界的に大変有名になりました。それはやはりプロモーションが卓越しているからだと考えられます。
エクストリームスポーツのプレイヤーを広告塔にするなど、体を張ったエキサイティングなスポーツのスポンサーとなっています。また、自らそのようなスポーツを支援するためにイベントを立ち上げることもあるそうです。
日本であれば、レッドブルは普通にコンビニで変える商品ですが、サラリーマンが手に取る栄養ドリンクとは一線を画します。決して、タウリン1000mgという機能を謳っていません。レッドブルが販売しているのは、レッドブルというブランドそのものなのです。
レッドブルのターゲットは明確です。ターゲットの目に留まるように、初期の頃はナイトクラブでイベントスポンサーとして、いわゆる遊び人たちに大盤振る舞いしていました。ターゲットもプロモーションも他社と全く違う。その考え方そのものが企業のDNAに存在していると感じられます。
今では、多くの若者が「翼をさずける」レッドブルを指名買いすることになり、独自のポジショニングに成功しています。このようなブランディングが功を奏した結果、他の栄養ドリンクの約2倍の金額で販売されています。
シーブリーズのブランディング事例
あなたは、シーブリーズと聞いてどのようなイメージをお持ちですか?資生堂が展開するシーブリーズは、ボディケアというジャンルの製品ブランドです。新しい事例とは決して言えませんがご紹介します。
以前は20代から30代の男性がシーブリーズのターゲットでした。私も当時その世代だったので、よく利用していました。しかし、2007年ごろ、時代の変化とともに、そしてニーズの変化とともに、ターゲットに求められるブランドでは無くなっていきました。
そこで、リポジショニングを行い、夏や海というイメージから日常に使用してもらうように訴求ポイントを変更し、ターゲットを女子高生に変更しました。長年継続してきた「海でマリンスポーツの後に汗を拭く20〜30代の男性」から「部活後に好きな男の子に会うために汗を拭く、恋する女子高生」に大転換しました。
シーブリーズは調査の結果、「高校生、とりわけ女子高生が制汗剤を使いたがっている」という潜在ニーズを見つけました。その結果、新たな顧客層を獲得し、ブランド価値を高めることに成功し、わずか1年で売り上げを低迷期の8倍にまで伸ばしたそうです。
リポジショニングを行う場合は、どの客であれば求めてもらえるのか、また競合他社に勝る市場はどこにあるのかを丁寧に考えていかなければなりません。感覚的な意思決定ではなく、不透明な情報を顕在化し、なるべく見える化していくという論理的に進んでいかなければならないこともあるという好事例でした。
ハーレーダビッドソンのブランディング事例
名実ともにバイク業界で知らない人はいないだろうと感じさせるハーレーダビッドソン。国内輸入バイク市場において2位のBMWとは圧倒的な差をつけています。ファンからの愛され方はハンパない。ハーレーダビッドソンのロゴマークのタトゥーを入れるほどの愛用者も数多く存在します。その強力なブランドはどのように構築されたのか。
ハーレーの魅力としてよく挙げられるのが、創設以来改良が重ねられてきたエンジンです。実際にハーレーのエンジン音を間近で体感すると、他の大型バイクでは感じられないような圧力と弾けるような躍動感を感じます。
ところが日本での販売は当初なかなかうまく行かなかったそうです。そこで正規販売店から始まり、その資格と哲学について大きな改革が行われました。それは、ディーラー、顧客、ハーレー社との共存を実現しなければならず、賛同できなければディーラーの資格を失うというものでした。
まずは、ハーレー社自身が、年に2回『ディーラー・ガイドブック』という冊子を全国の正規販売店向けに発行しました。本誌には全店・全従業員を名前と写真入りで掲載し、またディーラー従業員の誕生日や結婚記念日には本社から直接グリーティングカードと花束を贈呈されたそうです。営業成績に関しても、月間新記録、年間新記録を達成したものには表彰を行う等、イベントの拡充にも力をいれました。ハーレー社はディーラーを「ファミリー」と呼び、関係性の強化に取り組んだそうです。
ハーレーオーナーズグループは、ハーレー社が認めた巨大組織であり、3.5万人の会員がいます。そこでは、コミュニティが形成され、ツーリング、チャリティなどの活動が自主的に開催されています。ハーレー愛好家は、オンラインで自らカスタムをシェアする方も多く、今の時代でいう拡散が結果的に起こっています。商品の独自のこだわりに加え、ハーレー社とディーラーと顧客との関係性の強化、それこそがハーレーのブランディングの勝因といえます。
コカ・コーラのブランディング事例
この巨人をどう取り上げるかと考えていました。コカ・コーラのブランディングと言えば、多くがロゴマークなどのVI規格に関するものや「ブランド要素とは」のような表出したものを取り上げる事例が多いことに気づきます。
このブランドの根底にはデロニー・スレッジという1人の天才がいました。ザ コカ・コーラ カンパニーがスレッジの才能を見抜き、自社の広告部門に引き抜いたそうです。「広告の本質は製品を売れるようにすることではなく、『他人に自分を好きになってもらう』ことと同じである」という前任者の思想を受け継ぎ、実行しました。
そして、「すべての広告は、人々の心の中に『コカ・コーラ』に対する好意的な気持ちをいかにつくり出すか、という問いに対する合理的な説明であるべきだ」という哲学も同時に引き継ぎます。
ザ コカ・コーラ カンパニーは、ブランドというものに対する考え方を深く追求してきたのだと理解できます。
「その企業活動は、お客様に好意的な気持ちを作り出すことに成功していますか?」
商品、流通、接客、サービス、全てに企業活動に置いて、この問こそが強いブランドが実現する魔法の言葉です。ザ コカ・コーラ カンパニーの強さは、戦略やVI規格でもありません。この本質的な答えを導く問いを持っていることこそが、ザ コカ・コーラカンパニーの目に見えない強みだと考えられます。
ナイキのブランディング事例
さらに巨人であるナイキを取り上げたいと思います。1964年に創業した当時、同社は日本からオニツカタイガー(現アシックス)のランニングシューズを輸入しアメリカ国内で販売し始めました。現在のナイキという名前は、ギリシャ神話に登場する勝利の女神「ニーケー」から付けられています。
1970年代より積極的な広告キャンペーンを行い、「Air」シリーズや、バスケットボール選手のマイケル・ジョーダンとタイアップした「エアジョーダン」シリーズ、「エアマックス」シリーズが世界的に大人気となりました。特に1995年に発売された「エアマックス95」は、エアが可視化されたデザインであり、1990年代に大ブームとなったハイテクスニーカーとして、プレミアが付くほどの人気を博しました。
数多くのプロスポーツやプレイヤーのスポンサーとなり、必ずと行っていいほどナイキを目にする機会が多いわけですが、ナイキは圧倒的な商品力とデザイン性により、巨大ブランドへと成長しました。
ナイキの顔であるロゴマークと付随するスローガン「JUST DO IT.」ですが「行動あるのみ!」「やるしかない!」といった意味合いになります。ナイキには悪ぶった感じがブランドパーソナリティとしてあります。
「Just Do it.」は「ゲイリー・ギルモア(Gary Gilmore)」という死刑囚が、最後に言い残すことはあるかと尋ねられ、「Let’s Do it.(さっさとやろう)」と答えたことにヒントを得たとのこと。もちろん他にも、秀逸のコピーや広告を世にリリースしてきましたが「Just Do it」の背景には、ナイキのメッセージとキャラクターが垣間見えます。
ブランディングには、その製品や企業のキャラクターが反映された上で、一貫したコミュニケーションが必要です。ナイキは製品においても、その軸があるからこそリーボックやアディダスとは違った世界観を表現することが出来ているのです。
アップルのブランディング事例
なぜアップルはイノベーティブな会社、かっこいい憧れる会社となったのでしょうか。そして、アップルから離れられない、この強固なつながりはなぜでしょうか。アップルは期待を裏切らないという、この信頼感はどこからくるのでしょうか。
アップルには一言では語りきれない物語が存在します。アップルは商品を組み立てたりしません。メーカーのようでありますが、実はブランドそのものが商品だと考えています。MacやiPhoneといった製品はありますが、その魅力はアップルの積み上げてきたブランドそのものに起因します。
もしあなたの会社の商品がブランドそのものだったとしたら、企業活動にどんな変化が必要ですか?
冒頭にお伝えした「イノベーティブでかっこいい」というブランドパーソナリティは、私の主観ですが、そう思ってしまっていることこそがブランディングされているということだと言えます。
あなたの会社自身をブランドそのものとして育てていくとしたら、マーケティングやコミュニケーションにおいても変化が生まれるはずです。ぜひ考えてみてください。
グーグルのブランディング事例
グーグル創業者であるラリー・ペイジとセルゲイ・ブリンは、「ブランディング」という言葉を従業員に口にさせなかったそうです。「ブランディング」をするということは、「検索サービス」というものが質ではユーザーに訴求できなくなったということを意味するからだそうです。
なるほど、そんな考え方もあるかもしれません。本当に価値ある、オンリーワンのサービスが顧客に受け入れられているのであれば、そこに敢えてブランディングという視点は持とうとしないかもしれません。なぜならば、ブランディングが必要になってきている理由として、ブランドが情報過多に埋もれてしまい、顧客が商品/サービスにたどり着けないという前提があるからです。
グーグルほどの巨大な企業となってしまう前には、壮大なビジョンを持っていたことと思います。そのレベルで物事を考えている人たちの思考をもしかしたら私自身が理解できていないのかもしれません。
スターバックスやレッドブルを事例に出しましたが、彼らも競争の中で勝ち抜いてきたビジネスです。ところがグーグルにはある意味、検索市場における競合他社がほとんど存在しないという中で、ブランディングなど敢えて行う必要がないというのは、確かに一理あるかもしれません。
情報が増えすぎたことはグーグルが、インターネット上で仕掛けたことでもあり、ブランディングという側面においてもグーグルは次元を超えているのかもしれません。そんな風に考えさせられます。
ただ、ラリー・ペイジとセルゲイ・ブリンが取り組んできたことは、クオリティを高めること。そのレベルは想像を超えるものだったはずです。私はその考え方そのものがブランディングに最も大切なことであると理解しています。
アマゾンのブランディング事例
アマゾンは上記のグーグルと近いかもしれません。お客様に満足してもらうという商売の本質を追求すると、競争戦略におけるブランディングとは学者が理論付けをしたただの産物と思わされます。それほどまでにこれらの企業は突き抜けてしまっています。
アマゾンには「地球上で最もお客様を大切にする企業」という会社の根幹があります。文字を並べるだけなら誰でもできるかも知れません。しかし、アマゾンのそれは、スケール感が違います。
アマゾンに勤務している友人に尋ねると、彼は「アマゾンという会社は顧客第一主義しか考えていない。そのためにはシステムを構築して徹底的に省人化する。終いには従業員がいなくなることもあり得る」といいます。
昨今では物流の人も削減し、注文したらすぐに届くようにドローンを活用しています。ずいぶん前に発表された構想でしたが、アマゾンなら出来るだろうとその時はすぐに納得できました。すごい時代です。
アマゾンは、ウェブサイトの使い勝手、レコメンド機能、ワンクリック購入機能、翌日配送機能、キンドルやアマゾンダッシュボタンなど、顧客と関わる全てにおいて、高機能を追求しています。
もしかするとアマゾンもブランディングを敢えて意識していないかもしれません。ただし、顧客の中には、アマゾンの強いブランド像が熟成されています。 ブランディングはテクニック的なことだけではなく、トップの考え方に起因するものであり、その考え方が現場の行動にまで落とし込まれ、サービスが尊敬に値するレベルで提供されている。これはブランディングというものが経営そのものでなければならないということを意味しています。
とらやのブランディング事例
とらやは創業500年近くの老舗です。そんなとらやの印象は、最近ずいぶんとアップデートされています。TORAYA CAFEやヨーロッパへの展開で、常に挑戦しつづけるという姿を見せてくれています。
リブランディングとは、リポジショニングによる自社の立ち位置を変え、企業とユーザーの感性や印象をリフレッシュさせるだけではなく、社内をも活性化さます。とらやのリブランディングは「おいしい和菓子を喜んで召し上がっていただく」という考え方からぶれておらず、強い軸を持っていることを感じさせます。
リブランディングとは、強固な考え方を軸に、立ち位置を変え、従業員とお客様に新鮮な環境や商品を体験させることで、会社やお客様を活性化させていくということです。また同時に会社の体力も蓄えて置かなければ、リブランディングは困難であることも事実です。リブランディングによって世の中にインパクトを与えるためには、健全経営でなければならないということも留意しておかなければなりません。
湖池屋のブランディング事例
2016年経営が新体制になって湖池屋が取り組んだことは、企業ブランドや商品ブランドの刷新です。湖池屋は原点に立ち返りながら高品質を目指すことを経営判断として下しました。そして、ポリンキーやコイケヤスコーン、カラムーチョなどのお菓子ジャンルに加えて、健康、高付加価値、食という切り口で商品を展開していくことを発表しました。
2017年の業績は思ったように利益は伸びませんでしたが、2018年になってから随分と持ち直しています。2017年2月に発売された「KOIKEYA PRIDE POTATO」は、次第に販売が休止するほど売れることとなりました。経営体制が変わってすぐということもあったのかもしれませんが、リブランディングを行った結果と言うことができます。
ポテトチップスの原点に戻った全社的な商品開発からプロモーションの事例として、リブランディングを行う上での意思決定というものがいかに大事であるかを共有したいと思います。
湖池屋は約340億円ほどの売上で、利益が1%ほどの会社です。決して楽な経営をしているわけではありません。流通商品というスーパーやコンビニなどで展開される商品であり、利益管理も気を抜けない状況です。
私達が見習うべきことは、どのように資源を有効に活用するかということです。湖池屋の2019年売上は、2017年から約40億円ほど伸ばす計画だそうです。リブランディングを行う際に限られた資源をどのように有効活用するかというのは、やはり全社一丸となってブランディングに取り組んでいかなければ、一過性のイベントに終わってしまいます。リブランディングにはトップ自らの覚悟がなければ成功し得えません。
ユニクロのブランディング事例
2018年ユニクロの連結売上は2兆円を超えました。ますます加速するユニクロの快進撃。しかし、ユニクロを着ていることがダサいという時代があったことをご存知でしょうか?1998年のフリースブームにより、多くの方がユニクロのフリースを手にしました。しかし「人とかぶると嫌」など、結局はユニクロの安くてダサいというイメージが拭い去られたわけではありませんでした。
そこで、そのイメージ刷新に取り組んだのが佐藤可士和。リーズナブルで質が良くておしゃれなイメージを目指すことを決断します。柳井さんは、服に興味がない人がターゲットで、世界中の誰もが着られる普段着=ライフウェアという市場を創造し始めました。
その軸を佐藤さんがビジュアルアイデンティティと会社の方向性をデザインしていったというわけです。そのビジュアルアイデンティティの向上で見事にユニクロのブランドイメージが刷新されたことは記憶にあることと思います。そして、現在は巨大な会社として君臨し、消費者は気がつけばユニクロを着ているという状況になりました。
ユニクロはとても柔軟な考え方をしていると思います。ファッション感度の常識も変えました。2009年にジル・サンダーと組んで「プラスジェイ(+J)」を発売。そしてクリストフ・ルメール、ジョナサン・アンダーソンら世界のトップデザイナーと協業してファッション業界を驚かせました。UTというTシャツの展開もディズニーやマーベルと組んだり、自社に足りないブランド力を他のブランドを活用することで、新たなファンの取り込みも行ってきました。
足りない部分は他力を得るという会社の戦術は見事だと思います。自社の強みがターゲットからどう思われているか。ユニクロの場合は、安い商品を提供したいと思っていた所、安いからダサいという顧客のブランドイメージが作り上げられてしまいました。その現状をどう変えていくか、どう変えていきたいかと心に思うことこそがリブランディングの第一歩といえます。
サントリーのブランディング事例
サントリーは多くの方々に知られている飲料メーカーです。圧倒的な商品数とプロモーションにより、必ず毎日どこかで目にしているのではないでしょうか。そのサントリーは「水と生きる」という会社としての約束事を明言しています。口に入れるものとして、ピュアで透明性のある企業イメージをこの一言で表現しています。
そして商品だけではなく、その源である自然と地球環境への貢献を行っています。この考え抜かれた理念体系とガバナンス、そして活動に至るまでサントリーという会社から高い問題意識を感じます。
昨今、SDGsという国連が掲げた方針に対しても、サントリーは水というものを最重要課題として取り組むことを宣言しました。会社のあり方と透明性が問われている中で、企業は考えと行動を明らかにしていかなければなりません。その姿勢があるからこそ、会社に利益をもたらし、ステークホルダーを幸福に出来るのではないでしょうか。
ダイソンのブランディング事例
「吸引力の変わらないただひとつの掃除機」と聞けば、みなさんお分かりだと思います。そう、ダイソンです。ブランディングに非常に長けたダイソンですが、実は技術集団だと言われています。
イギリスにある本社の従業員8000人のうち3分の1はエンジニアか科学者で、2015年度売上高研究開発費比率は約12%、日本の同様のメーカーと比較しても随分と多いそうです。会社を経営するダイソン氏自身がチーフエンジニアのため、技術開発に対して潤沢に、柔軟に投資をすることができています。
ダイソンは元々コードレスクリーナーを販売していましたが、最近は照明だったり、空気清浄機だったり、ドライヤーだったりと商品ラインを拡大しています。これをブランド拡張といいます。
ダイソンは本当に吸引力が変わらないのでしょうか?個人的な見解ですが、実はダイソンの掃除機は壊れやすいと感じます。2年ほど使っていると、モーターがおかしくなり、掃除ができなくなりました。またデザインは本当に機能的でしょうか?あの凸凹している形のためでしょうか、結構重量もあります。
日本のコードレスクリーナーのメーカーはどこがブランディングに成功しているでしょうか。ここがダイソンが上手なところです。モーターはおかしくなる、重量もある、充電も遅いなど、吸引力以外は本当にイメージが良くありません(個人的見解)。なのに売れている。これがブランディングの力ですね。
自社製品の強いところをとにかく謳い続ける。「吸引力が変わらないただひとつの掃除機」というこのフレーズの強さだけで、ターゲットに強く印象づけているわけです。
またデザインがいいという意見もあるかもしれません。しかし、見た目のデザインは人の好みです。日本は無駄をなくしたシャープなデザインが多いと思います。それはあらゆるジャンルに於いて。そこに普段目にしないフォルムの掃除機が格好良くテレビに表示されることで、また手にとった時にかっこいいと思わされたことによって、購入してしまうわけです。
個人的にはメード・イン・ジャパンの方が勝っていると感じますが、ブランディングの良し悪しで消費者の購買心理は大きく影響を受けてしまっているのでしょう。ブランディングは消費者心理と深く関わっているということは火を見るより明らかです。
ミシュランのブランディング事例
パリ万博が開催された1900年、広まり始めたばかりのドライブ文化を、より安全で楽しいものにするためのガイドブックとして誕生したミシュランガイド。当時は、自動車修理工場や、市街MAP、ガソリンスタンドやホテルの紹介など、ドライブを楽しむためのガイドブックとして、無料で配布されていました。
しかし、ある修理工場で傾いた作業台の足代わりに床に積み重ねられたミシュラガイドを見て、ミシュラン兄弟は「人というものはお金を払ったものしか大切にしない」と考え、ガイドの有料販売に踏み切りました。ご存知の通り、ミシュランガイドはレストランを格付けをすることで、そこに車で行ってみたくなる機会を増やし、結果としてタイヤの需要喚起を狙ったものでした。
そのミシュランガイド掲載の基準は、 一つ星:「そのカテゴリーで特に美味しい料理」 二つ星:「遠回りしてでも訪れる価値がある素晴らしい料理」 三つ星:「わざわざ訪れる価値がある卓越した料理」
このストーリーは多くの人々がご存知だと思います。ここで大切なことは基準というものの重要性です。基準がぶれたり、曖昧だったりするとその基準に対する信頼感が損なわれてしまいます。人から信頼を得ることが出来うる基準から外れていないか、常に問い正さなければならないわけです。
もしミシュランととても仲良しで、たいして味も良くないレストランが掲載されてしまうと、たった一つのほころびによって、次々と設けた基準が崩れてしまい、終いにはブランドが地に落ちてしまいます。企業であれば、その基準というものは、経営理念や行動規範ということができます。
終わりに
いかがだったでしょうか。ブランディングは事例を学ぶと新たな発想や気付きに繋がります。昨今多くの企業がブランディングでお悩みのことと思いますが、できれば当社のような専門企業が伴走することがブランディングに最も近道です。ただし、ブランディングが経営を良くするものでなければ取り組む必要はありません。ぜひ目指すゴールを実現するパートナー企業を見つけて、じっくりと膝を突き合わせてブランディングに取り組んでみてください。