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ブランドパーソナリティとは|効果や設定方法、アップルの事例も解説

はじめに

ブランドパーソナリティとは、ブランドのキャラクターを表現するために必要な要素です。ブランドパーソナリティを理解して活用できれば、消費者をファンにすることをよりデザインしやすくなるでしょう。

 

ところがブランディングを行っている商品・サービスにおいて、ビジュアル的な表現には力を入れているものの、その根幹となる基準までデザインされている事例はあまり多くありません。ブランドパーソナリティの本質を理解し、商品・サービスにパーソナリティの定義を行うことは、選ばれるための大切な手段であるということです。

 

消費者にブランドパーソナリティをブランドイメージとして連想させることは、ファンとなってもらうための条件の一つです。ブランドパーソナリティはブランドアイデンティティの要素といえますが、ロジカルに設計することで社内外のコミュニケーションもスムーズになり、それぞれの意思決定の基準にもなります。どのようなパーソナリティを持たせてステークホルダーを巻き込んでいくかは、とてもエキサイティングなプロセスです。

ブランドパーソナリティの意味

まずは、ブランドパーソナリティの意味について解説していきます。消費者に与えるブランドイメージの根幹となる「ブランドパーソナリティ」は、ブランディングの中でも重要な項目の一つと考えられています。実際に、多くの企業のブランドガイドラインには、ブランドパーソナリティが明確に記載されています。

 

ブランドパーソナリティとは、パーソナリティ(性格)が含まれているように、企業や商品・サービスの人格的な「個性」を表します。優れたブランドパーソナリティを持つ企業は、統一されたブランドイメージを常に発信しています。そして消費者は、その商品を買うことでブランドイメージを自分に投影し、消費者自身の個性を表現するものになるのです。

 

デビッド・アーカー氏によると、ブランドパーソナリティの定義は「the set of human characteristics associated with a brand/特定のブランドについて連想される人格的なパーソナリティの集合」とされています。意訳になりますが、「特定のブランドの個性を人間の人格として例えたもの」と言い換えられるのではないかと思います。

 

尖ったブランドとして名が挙がるハーレーダビッドソンのパーソナリティは「荒削りでタフな男らしさ」と表現できるのではないでしょうか。そのバイクに跨れば、オーナーはタフな男らしさに磨きがかかるというイメージを浸透させました。そしてハーレーダビッドソンは、アメリカ中西部から始まり、今や世界中で大人気となりました。

 

中にはブランドロゴのタトゥーをいれるライダーもいるほど一定層の強い支持者がいることはとても有名な話です。ライダーがコミュニティを形成し、ハーレーの革ジャンを来てツーリングをする姿は、企業がブランドパーソナリティを顧客の感情に浸透させていった好例です。

認知心理学におけるブランドパーソナリティ

「ブランドパーソナリティがどうして必要なのか」を認知心理学的にお話します。そもそも人間はどのようなメカニズムで対象物を印象として形成するのでしょうか。印象形成には、各特性間のつながりやその特性に対するイメージなどの、個人的知識によっても影響します。

 

特に重要な他者との関係が印象形成に大きく影響をあたえることが示唆されており、実際に父親や母親、初恋の相手と外見や振る舞いが似ていると好意を持ちやすいのはご理解いただけると思います。

 

つまり人が記憶するときには、対象物に関する情報を関連づけ概念的にまとめて記憶を続ける特性があり、効率的に多くのことを記憶できるということです。ブランドパーソナリティを推奨する理由は上記で説明できるように、消費者がブランドを記憶する時に、個性としてまとめて記憶させるほうが効率的に多くのことを記憶させることができるのです。

 

消費者の感情に訴えかけるためには、マーケティングを行っていく必要があることは言うまでもありません。ブランディングを行う際に、その戦略をどのように設計し、どのようにパーソナリティを印象として記憶させるかは腕の見せ所です。

ブランドの連想を促す効果

今では世界中で愛されているラーメン。しかし、少し前までは女性一人で入店しにくく、汚れたお店からスープの匂いが店外にまで広がっており、男性が主に食べる食事としてイメージされていました。ラーメンの機能・性能を考えると、以下のようなものが挙げられるでしょう。

  • 豚骨スープの匂いが店外に匂う
  • ラーメンと餃子で油っぽいメニュー
  • 店頭には赤い提灯がぶら下がっている
  • カウンターと数席のテーブル席
  • メニューはラーメンだけ
  • 頑固親父の気分次第でお店がオープンする

 

このようなお店には、どちらかと言えば男性の、特に力仕事の方々が足を運ぶお店というイメージを持ってしまいます。このような印象が以前までのラーメン店のイメージでした。しかし昨今では、このような印象に変わっているお店も多いのではないでしょうか?

  • 無垢材のカウンターテーブル
  • 透明感のあるスープ
  • 清潔感のあるユニフォーム
  • 明るい印象をもたせる接客
  • 30代の若い主人

 

一概にラーメン店といっても、印象が違うラーメン店になります。つまり、消費者にどのような印象をもたせるかということは、企業側の努力で変わってきます。どのようなパーソナリティをもたせるかによって商品・サービスが変わり、付随してビジュアルアイデンティティも変化してきます。

 

ラーメン屋と言えば一風堂ですが、創業者がまさにこの視点を持っており、女性が一人でも入れるお店づくりを目指しました。その結果世界中で愛されるラーメン店にまで成長し、どんどん大きく成長しています。

ブランドの差別化を考える

日本で同業他社がひしめき合う中、差別化はなかなか困難なことだと思います。そのことがきっかけで私はニューヨークに会社を作ったわけですが、普通はそんな選択はできないと思います。しかし、ブランドを際立たせていきたいというのは多くの商品・サービスに共通することだと思います。ブランドパーソナリティは、他社との違いを作り出すための視点となります。

 

似たような商品・サービスが多数ある中、他社との比べてどのような違いを作り出すかがブランドパーソナリティの目指すゴールとなります。大切なことはブランドパーソナリティは作り上げることが出来るということ。消費者に届けて共感してもらうことも大切ですが、その前段階にはあなた自身がキャラクターを作り込まなければならないというミッションがあります。

 

例えば、東京・大阪・名古屋の街のキャラクターは全く異なるわけです。街で例えると大きなスケールになってしまいますが、お伝えしたいのはそれぞれの個性が存在するということです。ブランドパーソナリティを作り込む背景には、他社の商品・サービスがどのようなキャラクターであるのかをきちんと把握し、消費者がどのように共感しているかをできるだけ理解することが大事になります。

 

それは、データ的に知ることも大事ですが、実際に現場に足を運んで五感で感じることも大切にしていただきたいと思います。その上で、様々な差別化の軸を立てて検討していかなければなりません。

ブランドへの感情移入を引き起こしファンを作る

あなたは「類似性の法則」というものを聞いたことがありますでしょうか?アメリカの心理学者マーロンにより提唱され、よく恋愛や婚活で取り上げられています。人は自分と似ていると感じると好印象を持つものであるという法則です。

 

ブランドも消費者との恋愛と考えることができます。ブランドパーソナリティの成功事例としては、アップルを例に挙げたいと思います。アップルのブランドパーソナリティとは、どのようなものでしょうか。きっと「革新的」「最先端」「優れたデザイン」などのイメージを持たれる方が多いのではないでしょうか。

 

アップルユーザーとアップル製品には、強いつながりが存在します。新製品発表となれば、オンライン上で様々な方が情報を発信し、販売前日から徹夜で並んだりするユーザーもいます。アップルのコアユーザーはアップルと共に生きている、そんな印象さえ受けてしまいます。

 

これらは、先程の「類似性の法則」が働いているためと言うことができます。自分と似たブランドを好きになるという心理的作用によって、アップルに対して強い感情移入を起こしています。

 

ブランドパーソンリティは、企業によって定義されるものです。意図して定義したものを消費者に浸透させるには、商品・サービスで体現しなければなりません。その結果、消費者から共感を得て、感情移入を同時に起こしながら、ファンとなっていただけるのです。

ブランディングに一貫性をもたせる

アップルのブランドパーソナリティが「革新的」「最先端」「優れたデザイン」であるように、ブランドパーソナリティを定義することは、会社、商品・サービスの方向性を定義づけるということを意味します。アップルのブランドパーソナリティは筆者が考えているわけですが、おそらくみなさんも同じ意見ではないかと思います。

 

革新的ということは、アップルが他社のマネをする会社であってはならないということですし、世の中に存在しなかった価値を追求しなければならないということです。最先端ということは、常に新しい時代をのリーダーであるということで、そのような商品・サービスを私たちに提供してくれているということです。優れたデザインというのは、その商品を見ただけでアップルのものだと判断が出来ますし、プロダクトデザインそのものにアイデンティティが表現されています。

 

このように、ブランドパーソナリティは磨けば磨くほどにその商品・サービスのキャラクターが際立ちます。ここで注意すべきなのは、ブランドパーソナリティ以外のキャラクターを消費者に想起させせてはいけないということです。ブランドパーソナリティ以外のキャラクターは不要であり、やるべき行動とやってはならない行動にも影響を与えるわけです。このようにブランドに一貫性をもたせる力をブランドパーソナリティは持っているわけです。

おわりに

ブランドのパーソナリティとは、個性を際立たせながら戦略的な意思決定にも影響を与えるものということがご理解いただけましたでしょうか。ブランドパーソナリティを見つけるための問いは難しいものではありません。

 

「私らしさってなんだろうか?」「私たちの商品・サービスってどんなキャラクターを持っているだろうか?」漫画のキャラクターを思い浮かべるように考えてもらうといいと思います。最も大切なことは、始めてみることです。ブランドが具体的にイメージでき始めると、段々とアップデートできるようになります。ぜひ皆さんチャレンジしてみてください。